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イルマディア、長老から手紙をもらうの巻 [日記]

 満面の笑みをたたえたイルマディアが、姉妹達のねぐらにやってきた。最近はあちこちに精力的に出掛け、なかなか戻ってこない日が多かったのだ。なにがそんなにうれしいのかとカーナに問われて、イルマディアは荷物から一通の手紙を取りだした。

「それ・・・もしかしてドラウの長老からの?」

「そうよ。へへ〜、ついに長老もあたしの実力を認めたってことよね。」

「へえ・・・なるほどねぇ・・・。」

 うなずいているのはイルマディアと同じドラウのシシィとオディール。

「で、これから長老に会いに行くの?」

「もちろんよ。いってきまぁす!」

 ほとんど足が地に着いてないような歩き方で、イルマディアは出ていった。そのあとを追おうと立ち上がったシシィとオディール。

「見に行きましょ。心配だわ。」

「あなた達が仲良いのはわかるけど、あまり甘やかさなくてもいいんじゃない?長老から手紙が届いてるってことは、あの子が自分の力で実績を積み上げてるってことなんだし。」

 とノイラ。

「心配してるのはイルマディアじゃないわ。長老のほうよ。さっきの手紙は、私達がもらったのと同じ文面だったけど、長老の気持ちとしては、絶対あのあとに10枚分くらいの小言を書きたかったと思うのよね。」

「けっこう危なっかしいことしてるもんねぇ。あのレベルでタングルのエリート集団にケンカ売ったり。イルマディアの顔見たら、長老のことだからきっと小言を言い出すわ。だから私達は、長老の血圧が上がらないように、なだめる役よ。」

「なるほどね・・・。ま、ほどほどにね。」

「はーい。」 

「こんにちはぁ!長老、お手紙ありがとう〜〜」

 その声に目だけで振り向き、ドラウの長老ニックス・デュランディミオンは渋い顔をした。

「・・・来おったか。」

「そりゃそうよ。ねえ長老?これであたしのことを一人前と認めてくれたってことよね。」

 イルマディアはからかうような笑みを見せて、長老の顔をのぞき込んでいる。

「ふん・・・お前が自分の力で実績を作ったのだ。認めないわけにはいくまい。だがなイルマディアよ、お前の成功はお前一人の力ではないと言うことは、わかっておるのだろうな?そもそもお前は昔から飽きっぽくて・・・」

「あー!はいはいはいはい!その話はもう何百回も聞いたわよ。わかってるってば。そんなことよりも、ねえ長老、あたしヴァーチュオソになれたのよ。それで歌を覚えたから、お礼に聞かせてあげるわね。」

「わー!ちょっと待て!」

 焦る長老。

「あら、遠慮しないでよ。ここまで来れたのも長老のおかげですって、ちゃんと歌詞まで考えてきたのに。」

「い、いや、ちょっと待て・・・そ、その歌は、敵と戦うときのために取っておきなさい。歌も無限に歌えるわけじゃないのだからな。」

「そう?長老がそう言うなら、残念だけどやめておくわ。」

 その言葉を聞いて長老は心からホッとした。

(まったく・・・ヴァーチュオソの歌は敵を魅了してステイタスを下げるものだ・・・。そんな歌をここで歌われては・・・。それでなくともこの娘の歌の実力は・・・・)

 「音痴のイルマディア」の異名は、未だ完全に返上するにいたってはいない。

「あー、まあその、なんだ、お前ががんばっていることは認める。だが、それはわしのおかげなどではなく、カーナ達のバックアップがあればこそだ。お礼なら彼女達に言いなさい。あ、だ、だがな!歌はいい。どうせ歌うならヴァーチュオソの歌ではなく、普通の歌にしなさい。(それなら少しは聞けるものになってるだろう・・・・。)」

「はぁい、それはわかってるわよ。だからもっとレベルが上がったら、みんなの冒険にも少しは手が貸せるかな、なんて思ってるの。」

「うむ、それは良いことだ。これからも浮き足立たず、地道に精進するのだぞ。」

「はぁい、それじゃ長老、また来るねー」

「ああ、気をつけてな。」

 立ち去るイルマディアのあとから、顔を出したシシィとオディール。

「長老、お疲れ様。」

「歌を歌われなくてよかったわね。」

 2人ともさっきからの長老とイルマディアのやりとりを見ていたので、笑いをこらえるのに必死だ。

「お前達か・・・。まったく、来ているならさっさと出てきてくれればいいものを・・・。立ち聞きとはいい趣味ではないぞ。」

「だっておもしろかったんだもん。ふふふ、でもイルマディアもがんばってるわよ。顔を見るたびに小言なんて言わなくても大丈夫なくらいにはね。」

「それはわかっておる。だが、調子が良いとすぐに浮き足立つのがあの娘の悪いくせだ。お前達が手綱を引っ張って、うまく調節してやってくれよ。」

「はいはい、長老も毎日忙しいみたいだけど、ちゃんと休みも取ってよね。」

「そんなことはわかっておるわ。さあ、もう行きなさい。ストームリーチは未だ安全とはほど遠い状況の中にある。お前達の力が必要とされているところはたくさんあるはずだ。こんなところで油を売っている時間はないはずだぞ。」

「ええ、それじゃね。」

「またね。」

 去っていくシシィとオディールを見送る長老。

「いいお嬢さん達ですな。」

 長老の隣でコインロードの仕事を請け負っている職人がつぶやいた。

「うむ・・・だがいささか元気がよすぎて、無鉄砲な娘達ばかりだ。」

「はっはっは!頼もしいではありませんか。」

「そう言い方もあるがなあ・・・・。」


「あのぉ、手紙をいただいたんですけど・・・。」

 長老の前に、一人の冒険者が立っている。人間の男だ。

「うむ、わしがドラウの長老ニックス・デュランディミオンだ。」

 ストームリーチはまた激変の時を迎えようとしている。トゥエルヴが本格的に活動を始めるとの噂もある。だがどんな悪がこの地に降り立とうとも、きっとこの町の冒険者達が叩き潰してくれる。そのためにはもはや種族になどこだわるべきではないのだ。明るい未来を自分達の手でつかみ取るために、今日も長老は冒険者達に手を差しのべる。
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